※この記事は、2021/03/04日本ネット経済新聞連載していた記事をリライトしたものです。
(https://www.bci.co.jp/netkeizai/serial/3215)
【顧客体験の分断、会話ログの未活用】
この1年、オンライン接客の導入を一気に進めた企業は多くあると思います。
しかし、計画なくオンライン接客を進めると失敗につながる可能性が高くなります。そこで今回は、オンライン接客で失敗する事例を4つご紹介します。
■カスタマージャーニーの分断
まず1つめが、カスタマージャーニーを分断してしまっているケースです。
ここ数年、オンライン接客という言葉は広義に解釈されてきています。数年前までは、マーケティングオートメーションツールでのポップアップとチャット接客の2つをオンライン接客としていました。
しかし、最近では、テレビ電話やライブ配信はもちろん、消費者に情報を送ること自体までもオンライン接客と解釈されるほどになっています。
そして、その主なチャネルとしてECサイトやライン、インスタグラムなどさまざまなものが挙げられます。こういった多くのチャネル、さらに店舗も含めて、お客さまは同じ企業・ブランドであれば同じイメージを持って接します。
しかし、企業側がそれぞれ分断して運用してしまうことで、横串の通った顧客体験を提供できなくなっているのです。
たとえば担当部署ごとに、「とりあえずテレビ電話をやってみよう」「キャンペーンでライブ配信をやってみよう」と“点”で運用すると、想定以上にお客様に利用してもらえなかったり、チャネルの良さをしっかりと届けることができなかったりし、新たな課題が生まれることになります。オンライン接客を進めるうえでは、全体的なカスタマージャーニーを想定したうえで、次の展開を予想して新たなチャネルに着手していく必要があるでしょう。
■会話ログデータの活用されていない
2つめが、お客さまとの会話のログデータを活用していないことです。
さまざまなチャネルでお客さまとの接点が増えていくなかで、会話のログデータはどんどん蓄積されているはずです。店舗においてもお客様との会話データが販売員のアタマの中に眠っているというケースはよくあることです。カリスマ販売員は、このデータをうまく活用できている人ともいえるでしょう。
オンライン接客においても、お客さまとの会話のログデータの活用方法をしっかり検討することで、今後の新たなサービスや商品の開発、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の改善などにつなげていくことができます。
会話ログは事業を展開してくうえでの宝の山です。まずは、会話ログを蓄積する、アウトプットするというスタンスは重要視するべきポイントです。
【オンライン接客の目的の未設定】
■ツールのPDCA運用の未実装
3つめがPDCAサイクルを適切に回せていないケースです。
つまり、オンライン接客を行う目的やゴールをしっかり設定していないということです。
まずは、KGIとKPIを明確に設定すること。これが設定されていれば、途中で発生する目標と評価とのギャップに対しても、どのような打ち手が必要なのかを考えていくことができます。
たとえば、オンラインでのサービスを始め、すぐに費用対効果で結果を判断する企業がありますが、それでは短期的な売上の増加で終わりかねません。とくに、ライブ配信やテレビ電話、チャットなど双方向でコミュニケーションを行うツールに関しては、お客さまがその瞬間に購入するというケースは少なく、効果が見えづらい接客方法です。
お客さまは、大手ECモールも含め、さまざまなチャネルを自由に選んで購入します。
そのため、自社ブランドのファンを作る、継続的に購入できるお客さまを増やすなど、まずは中長期的な目標を定めること。その結果、短期的な効果ももたらすことができるようになります。
一つひとつのチャネルでの評価軸を誤らないためにも、ゴールの設定、PDCAサイクルを適切に回すことは非常に重要な課題になるのです。
■多チャネル化の未対応
最後の4つめが、OMOを前提にしていないという失敗です。
オンライン接客とオフライン接客の垣根を超えた接客は、オンライン接客を進めるうえでの大前提です。これは、コロナ禍で余儀なくされる店舗退店計画と大きく関わる課題のため、次回のメルマガにて、詳しくご紹介していきます。
〈筆者プロフィール〉
空色 中嶋洋巳社長
2005年4月西日本電信電話入社。2013年10月空色を創業。チャットを軸としたウェブ接客ソリューション「OK SKY」の開発・提供、チャットセンター運用受託事業を展開。2016年からIBM Watson等のAIを活用したチャットボットの「WhatYa Buttons」提供を開始し、AIと人を組み合わせた新たなカスタマージャーニー設計の創出に取り組む。