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♯2 明暗分かれるチャット接客

21/12/10 15:19 / by サイトウ

※この記事は、2020/11/26 日本ネット経済新聞連載していた記事をリライトしたものです。 (https://www.bci.co.jp/netkeizai/serial/2929)

【明暗分かれるチャット接客】

コロナの影響を受けた2020年3~5月、アパレルの店舗販売をはじめ、対面接客を行ってき た企業は、さまざまなシーンで、デジタルへの注力を余儀なくされました。その結果、当社のサー ビスを導入する企業では、ECサイトの売り上げが昨年度対比で20%伸びたり、50%伸びたり しました。なかには売り上げが3倍以上に伸びたという企業もありました。

 

チャットの導入企業の 数も、以前の約3倍に増加しています。 

とはいえ、当然ですが、従来からデジタル施策に投資をしてきた企業とそうでない企業との間に は大きな差が現れています。

 

この未曽有の事態が続く中で、いま企業にとって重要なのは、柔軟性のある体制作りだと感じて います。例えば、店舗の休業を突然余儀なくされた企業の中には、柔軟な発想力で、店舗スタッフ に急きょチャット接客を担当させたという企業も多くありました。 

その結果、顧客体験はよりリッチなものになりましたし、ECでも店舗と同様、安定的に商品を 購入してくれる顧客作りを実現できるようになりました。 

 

一方で、これまでそれほどECに注力してこなかった企業の多くは、ユーザビリティーを向上さ せたり、ECならではの付加価値を提供したりといったことが、すぐにはできなかったようです。 大慌てで、チャット接客の導入を進めた企業もありました。 

 

当社のサービスを利用しているアパレル企業様では、コロナ以前からチャット接客に取り組んで きました。16年から当社のスタイリストがチャット接客を担当しています。2020年1月からそのア パレル企業は、働き方の多様化や、ECサイトの強化を目的に、店舗の接客スタッフが在宅接客を 行う「在宅ウェブ接客」サービスを導入しました。

コロナ発生後は販売員のテレワークを推進する目的で、在宅接客のメンバーをさらに増やしたそ うです。現在では、子育て中のスタッフが中心となって、在宅接客に取り組んでいます。 

ただ、対面接客とオンライン接客では、接客方法が異なります。チャット接客の担当を当社スタ イリストから店舗スタッフへと切り替えた結果、購入率が低下してしまったという相談もお聞きし ます。 

そういった課題をクリアするために当社では、オンライン接客におけるトレーニングを実施した り、トレーニング結果を確認したりする形で、いわゆるマネジメントのサポートを行っています。 こういったサポートが、より充実したオンライン接客の実現につながると考えています。

【戦略的なコミュニケーションを】 

2020年5月までは、店舗スタッフがECサイトの中で接客する仕組みの導入が大きなトレン ドとなっていました。ところが、緊急事態宣言が解除された6月以降は、再び状況が変わり、新た な課題が生まれています。 

 

店舗営業が再開されると、オンライン接客に注力してきたスタッフも、店舗での仕事に戻りまし た。そのため、店舗とオンラインの、仕事のバランスの取り方が難しくなりました。労働力のバラ ンスの取り方だけでなく、スタッフの業績評価の方法も課題となっています。 

企業としては、店舗やECといった管轄を超越する形で、従業員のモチベーションを高めるため の評価体制づくりを進めていく必要があるでしょう。 

 

オンライン接客への移行というのは、チャットを導入すればそれでいいというものではありませ ん。Zoomによる接客や、インスタグラムでのライブコマースなどを取り入れる企業も増えてい ます。そうした企業では、高単価の商品を購入するお客さまや、すでにスタッフとの信頼関係が構 築できているお客さまとのやりとりに、Zoomを活用しているようです。 

今後は、3密を避けるための来店予約もオンラインで受け付けることになるのではないでしょう か。 

このように、カスタマージャーニーに変化が生じ、ツールのすみ分けが生まれてきているように 感じます。

初めてオンライン接客に取り組んでいる企業の中には、ツールを導入したものの、具体的にどう 業務を改善すればいいのかわからないというケースもあります。 

さらに、在宅接客では、ネットワーク環境の構築や、セキュリティーの問題も課題となっていま す。社内でマネジメント体制をどのように構築していくか、専門のコンサルタントに相談する必要 があるかもしれません。 

 

今後、感染者が増加すれば、再びお客さまの足が店舗から遠のくことも考えられます。スタッフ の時間の使い方、お客さまとのコミュニケーションの取り方などは、長期的に考えていく問題にな りそうです。これからは、売り上げ維持と雇用維持という二つの観点を意識しながら、より戦略的 にデジタル接客を図っていくことが重要になると思います。 

 

〈筆者プロフィール〉

空色 中嶋洋巳社長

 2005年4月西日本電信電話入社。2013年10月空色を創業。チャットを軸としたウェブ接客ソリューション「OK SKY」の開発・提供、チャットセンター運用受託事業を展開。2016年からIBM Watson等のAIを活用したチャットボットの「WhatYa Buttons」提供を開始し、AIと人を組み合わせた新たなカスタマージャーニー設計の創出に取り組む。

Tags: オンライン接客

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